
2026年7月25日、IKE・Biz としま産業振興プラザにて、「縄文アートクッキーをつくろう!〜作って学ぶ豊島の文化財〜」を開催しました。
本ワークショップでは、本物の土器片を観察し、スケッチを行ったあと、その特徴を取り入れた土器形クッキーづくりを体験しました。
開催概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | 2026年7月25日(土) |
| 会場 | IKE・Biz としま産業振興プラザ |
| 対象 | 小学5年生以上 |
| 参加人数 | 15名 |
| 主催 | 特定非営利活動法人文化財保管活用支援機構(CPSUS) |
| 後援 | 文部科学省、豊島区教育委員会、公益社団法人日本文化財保護協会、観光考古学会 |
| 助成 | 公益財団法人としま未来文化財団(令和8年度としま文化応援団事業助成) |
| 協力 | 豊島区文化スポーツ部文化事業課(資料提供) |
本物を観察するところから始まるワークショップ
参加者は物の土器片を手に取り、文様や形、土の色や含まれている粒などを観察しました。
観察した内容はスケッチシートにまとめ、「よく見る・考える」体験を行ってから、クッキー制作へ進みました。


観察した特徴をクッキーで表現
観察した土器の特徴をもとに、生地を成形し、縄文の文様を付けて焼き上げました。
完成後は、それぞれの作品を見比べながら、豊島区の文化財について学びました。


参加者全員で記念撮影
最後は参加者全員で完成した作品を持って記念撮影を行いました。
子どもから大人まで、それぞれの視点で文化財を観察し、楽しみながら学ぶ時間となりました。

おわりに
今回の開催にあたり、ご参加いただいた皆さま、ご支援いただいた公益財団法人としま未来文化財団の皆さまに、心より御礼申し上げます。
CPSUSでは、今後も文化財を「見る」「考える」「つくる」体験を通して学ぶワークショップを各地で開催してまいります。
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NPO法人文化財保管活用支援機構(CPSUS)では、2026年8月2日(日)に、CPSUS企画トークライブ「考古学をあそんじゃえ」を開催します。
今回お迎えするのは、土器形クッキー「ドッキー」をはじめ、考古学や文化財をテーマにしたお菓子を制作されている、おかしあそびプランナー・ヤミラさんです。
お申込みは、ライブ配信前の2026年8月2日(日)10:30まで受け付けます。
アーカイブご希望の方は2026年8月16日(日)23:59までご視聴できます。

土器を、お菓子にするという発想
文化財は、どうしても「見てもらう」ものになりがちです。
展示を見る。
解説を読む。
講座で学ぶ。
もちろん、それは文化財を伝えるうえで大切な方法です。
けれど、文化財にまだ関心のない人にとっては、少し遠く感じられてしまうこともあります。
では、どうすれば文化財に思わず近づいてもらえるのか。
そのひとつの入口が、土器形クッキー「ドッキー」のような、文化財を題材にしたお菓子づくりなのかもしれません。
ヤミラさんの作品づくりの裏側を聞く30分
今回のトークライブでは、ヤミラさんの作品写真や制作エピソードをもとに、土器をお菓子にした理由や、考古学・文化財をどのように“あそび”や“体験”に変えているのかを伺います。
単なる作品紹介や作り方講座ではなく、文化財を楽しく伝えるための「入口づくり」について考える30分です。
文化財イベント、展示、講座、ワークショップなどを、もう少し届く形にしたい方はもちろん、ヤミラさんのファンの方、お菓子の世界観が好きな方、考古学や文化財に興味のある方にもおすすめの内容です。
開催概要
タイトル
CPSUS企画トークライブ
「考古学をあそんじゃえ」
― いっそ、文化財に食いついてもらおうじゃないか ―
日時
2026年8月2日(日)10:30〜11:00
配信方法
YouTube限定公開ライブ
※お申し込み完了後の確認画面に、視聴URLを表示します。
参加費
無料
対象
学芸員、文化財担当者、イベント企画者、文化財活用に関心のある方
ヤミラさんの活動や、考古学・文化財を楽しく学ぶ入口に関心のある方
アーカイブ視聴について
配信後、同じURLまたは別途ご案内するURLからアーカイブをご視聴いただけます。
アーカイブ視聴期間は、2026年8月16日(日)23:59までを予定しています。
視聴期間終了後は、動画を非公開にする場合があります。
主催
NPO法人 文化財保管活用支援機構(CPSUS)
※本トークライブは、午後に開催予定の親子向け土器形クッキーワークショップとは別企画です。
こんな方におすすめです
・文化財イベントや講座を、もう少し楽しく届けたい方
・展示や教育普及の入口づくりに関心のある方
・子ども向け、親子向け企画のヒントを得たい方
・地域の文化財活用に関心のある方
・考古学や文化財を、もっと身近に感じてもらう方法を考えたい方
・ヤミラさんの作品づくりや世界観に関心のある方
お申し込み
視聴をご希望の方は、下記の申込フォームよりお申し込みください。
お申込みは2026年8月2日10:30までです。
お申し込み完了後の確認画面に、YouTube限定公開ライブの視聴URLが表示されます。
※視聴URLの無断転載・不特定多数への共有はお控えください。
※本トークライブの記録映像・画像・内容の一部は、後日、CPSUSの活動報告や広報のため、編集のうえ紹介する場合があります。
関連記事(note)
土器をお菓子にする。冷静に考えると、かなり思い切った発想である。
広島ワークショップ
https://cpsus.org/news/hiroshima-2026event
当機構の活動紹介
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満席となりました。お申込みありがとうございました。(2026.7.15)
令和8年度 としま文化応援団事業 支援活動助成金 採択事業
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報道関係者の方へ
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「来られない」構造から考える文化財行政の人材問題
SNS上で、自治体職員とみられるアカウントの投稿が話題になっていた。
「学芸員を募集したが、応募がなかった」
その投稿には、多くの反応が寄せられていた。
資格は持っている。しかし、その給与水準では生活が成り立たない。
大学院まで進み、専門性を身につけても、任期付きや非正規雇用では将来設計が難しい。
あるいは、「学芸員になりたかったが、就職氷河期の頃は募集自体がほとんどなかった」という声もあった。
感情的な表現も少なくなかったが、単なる不満として片付けられる話ではない。
そこには、長年積み重なってきた文化財行政の構造的な問題が表れている。
本稿では、「学芸員が来ない」という現象を、単なる人手不足ではなく、専門人材の維持と継承という観点から整理してみたい。
「来ない」のか、「来られない」のか
まず、問いの立て方を変える必要がある。
本当に、文化財分野を志望する人材が減ったのだろうか。
それとも、志望しても働き続けられる条件が整わず、その結果として現在の状況が生まれているのだろうか。
1990年代後半から2000年代にかけて、多くの自治体では財政悪化や行政改革の影響を受け、専門職員の採用が抑制された。これは、いわゆる就職氷河期の時期とも重なる。
文化財行政や博物館分野を志望していても、採用枠そのものが少なく、別の職業へ進まざるを得なかった人材は少なくない。
現在、埋蔵文化財行政や博物館現場では、「中堅世代が少ない」という声を耳にすることがある。若手と定年前後のベテランの間が薄く、現場を支えるべき年代の層が十分に形成されていない、という感覚である。
これは個人の努力不足ではなく、採用が継続されなかった時期が存在した結果とも言える。
専門職は、採用を止めればすぐに断絶する。数年採らなかっただけでも、十数年後には中堅層の不在として現れる。
文化財行政は、その影響を現在になって受け始めている。
数字が示す埋蔵文化財行政の変化
こうした変化は、文化庁の統計資料にも表れている。
文化庁「埋蔵文化財関係統計資料 ―令和7年度―」(令和8年3月)によれば、全国の埋蔵文化財専門職員数は平成12年度に7,111人を記録した。その後減少傾向が続き、令和7年5月時点では5,571人となっている。内訳は、都道府県1,693人、市町村3,878人である。
ピーク時から約1,540人が失われた計算になる。
一方で、発掘届出等の合計件数は令和6年度で78,368件となっており、業務量そのものが大きく減少しているわけではない。
つまり、「人が減り、仕事は減っていない」という構造が、統計上も確認できる。
さらに重要なのは、その内訳である。
近年は、会計年度任用職員や任期付き職員への依存が進んでいる自治体も少なくない。統計上は「専門職員数」として計上されていても、数年で任期が終了する場合、継続的な知識蓄積は難しい。
埋蔵文化財行政は、単純な作業労働ではない。
遺構や遺物の理解だけでなく、地域史、過去の調査履歴、収蔵状況、報告書との対応関係など、多くの情報を長期的に把握しながら業務を行う必要がある。
しかし、担当者が短期間で入れ替われば、その蓄積は継続しにくい。
人員の「数」だけでは見えない問題が、そこにはある。
「経験者が欲しい」が、経験を積めない
もう一つ、埋蔵文化財分野には独特の難しさがある。
多くの自治体では、採用時に発掘調査経験や報告書作成経験を求める傾向がある。少人数体制の現場では、採用直後から一定の実務能力が必要になるためである。
その事情自体は理解できる。
しかし、文化庁「適正な埋蔵文化財行政を担う体制等の構築について」(平成26年報告)では、大学で発掘調査経験を積む機会が限られていることや、実践的な人材育成体制が十分ではないことが課題として挙げられている。
つまり、現場は経験者を求めるが、その経験を積める場が不足している。
採用されなければ経験が積めない。
しかし、経験がなければ採用されにくい。
この循環の中で、資格を取得しても文化財分野から離れていく人材が積み重なってきた。
SNSで見られる「あの時採用されなかった」という声は、単なる感情論ではなく、この構造の中で生まれている。
専門性に見合う処遇になっているのか
ここで、待遇の問題にも触れなければならない。
専門人材の確保を本気で考えるなら、給与水準や雇用形態の見直しは避けて通れない。
発掘調査経験や報告書作成経験を求めながら、任期付き・低水準の待遇で募集を続けても、人材が集まりにくいのは当然である。
文化庁の令和6年度講習会資料でも、発掘調査の現場環境や労働条件の改善は課題として挙げられている。これは単に作業環境の問題にとどまらない。専門職として働き続けられる条件を整えなければ、人材の確保も定着も難しくなるということである。
文化財行政を担う職員は、単に「文化財が好きな人」ではない。
発掘調査、法令理解、資料管理、報告書作成、保存処理、住民対応など、多岐にわたる専門業務を担っている。自治体によっては、開発事業との調整や事業者対応まで担当する場合もある。
しかし、文化財行政は自治体内部で優先順位が高い分野とは言い難い。
福祉、防災、子育て、インフラ整備と比べれば、文化財予算や専門職員の配置は後回しになりやすい。
しかも文化財行政の問題は、すぐには表面化しない。
整理遅延、台帳不整合、未報告資料、引継ぎ不足といった問題は、数年から十数年かけて徐々に蓄積していく。そのため、危機が見えにくいまま、人員削減や非正規化が進みやすい構造がある。
ここで問われるのは、応募者の意欲ではない。
専門職員が減り、届出件数は高水準のまま、少人数配置の自治体が多く、採用後の離職も一定数生じている。さらに、待遇や労働環境の改善も課題として示されている。
こうした状況でなお、「募集したのに来ない」とだけ言うのであれば、それは人材側の問題ではなく、受け入れる側の条件設計を見直すべき段階に来ているということではないか。
「文化財が好きな人なら来てくれる」という前提は、すでに成り立たなくなっている。
文化財行政は、専門職の善意や使命感だけで維持できる段階を過ぎつつある。
問題は「人数」だけではない
文化財行政の人材問題は、単に「人が足りない」という話では終わらない。
むしろ深刻なのは、知識や判断が個人に依存しやすいことである。
文化庁「埋蔵文化財専門職員の育成について」(令和2年3月)では、市町村における埋蔵文化財専門職員の配置状況について、1〜2名配置の自治体が40.9%、3名配置が21.1%とされている。
多くの自治体では、少人数体制で日常業務を回している。
その中で、担当者は長年にわたり地域の情報を蓄積していく。
どの遺物がどこに保管されているか。
過去の整理作業はどこまで終わっているか。
古い台帳と現在の収納状況に差異はないか。
未報告資料は残っていないか。
そうした情報は、本来であれば組織として共有されるべきものである。
しかし現実には、個人の経験や記憶に依存している場面も少なくない。
担当者が異動・退職した後、「台帳は存在するが現状と一致しない」「資料の所在確認に時間がかかる」「前任者でなければ経緯が分からない」といった状況が生じることがある。
文化庁資料では、埋蔵文化財専門職員の採用後3年以内離職率について、令和元年度18.7%、令和2年度11.5%、令和3年度11.2%という推定値も示されている。
採用できるかどうかだけでなく、採用した人材が現場に定着し、経験を積み重ねられるかどうかも課題になっている。
もちろん、全国の自治体が同じ状況というわけではない。丁寧に管理体制を維持している自治体も存在する。
ただ、人員削減と継続性の低下が進む中で、知識継承の問題が顕在化しやすくなっていることは否定できない。
文化庁の資料でも、専門人材の継続的な確保や、行政体制の維持の重要性は繰り返し指摘されている。
持続可能な文化財行政とは何か
文化財を守るというと、遺物や建造物そのものに意識が向きやすい。
しかし、実際には、それを扱う人材や運用体制が維持されなければ、保存も活用も成立しない。
たとえば、収蔵資料の整理状況が担当者個人にしか分からない状態では、異動や退職が発生した瞬間に業務は停滞する。
未整理資料の有無が把握できない。
台帳更新のルールが共有されていない。
写真データと実物資料の対応関係が不明確になる。
そうした状態が続けば、現場は「判断できない」状態へ近づいていく。
近年、文化財行政ではDX推進やデータベース整備の必要性も議論されているが、本質は単純なデジタル化ではない。
重要なのは、「誰か一人だけが分かっている状態」から脱却できるかどうかである。
専門知識を軽視するという意味ではない。むしろ逆である。
専門性が重要だからこそ、その知識を継続的に引き継げる仕組みが必要になる。
ベテランの退職は続く。
知識は、人とともに現場を離れていく。
その一方で、現場では「誰に相談すればよいのかわからない」という声も少なくない。
文化財行政に必要なのは、専門職員を増やすことだけではない。判断や知識を個人の中だけに閉じ込めず、必要な時に相談でき、引き継げる環境をどう維持するか——その仕組み自体が問われている。
「募集しても来ない」という声の背景には、単なる人手不足ではなく、専門的な知識と経験をどのように継承していくのかという、文化財行政そのものの課題が横たわっている。
参考資料
文化庁「埋蔵文化財関係統計資料 ―令和7年度―」(令和8年3月)
文化庁「適正な埋蔵文化財行政を担う体制等の構築について」(平成26年10月)
文化庁「埋蔵文化財専門職員の育成について」(令和2年3月)
文化庁「埋蔵文化財保護行政の現状と課題 令和6年度講習会版」
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令和8年度、文化庁は「全国各地の魅力的な文化財活用推進事業」の公募を開始した。本事業は、国指定等文化財、世界文化遺産、日本遺産、歴史的風致形成建造物等を対象として、魅力的な体験等の造成・販売を支援し、文化財の高付加価値化を図るものである。応募要領では、インバウンドの高付加価値旅行者を含む、国内外の知的好奇心旺盛な旅行者が、文化財の成り立ちや、それを守り伝えてきた人々の取組を理解しながら、より深く楽しむことができる体験の造成が掲げられている。さらに、専門家による伴走支援も組み込まれており、継続性や商品化も見据えた事業設計が求められている。
この公募は、文化財を単に「保存すべきもの」として扱うのではなく、社会に開かれた資源として位置付け、その価値を体験や学びを通じて伝えていこうとする施策の一つとして捉えることができる。文化財保護法第1条も、この法律の目的を「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」と定めており、保存と活用は制度上も対立する概念ではない。保存だけでもなく、活用だけでもなく、その両方をどう成り立たせるかが、現在の文化財行政における基本的な課題である。
実際、文化財が地域の観光や教育、地域理解の促進に資する可能性は大きい。ある地域に残された文化財は、その土地で何が起き、どのような人々が暮らし、何を築いてきたのかを伝える具体的な証拠である。とりわけ、現地でしか得られない実感や、地域の歴史と風土を結びつけて理解できる体験は、一般的な観光資源とは異なる深さを持つ。文化財の背景にある歴史、技術、信仰、生活文化をどう伝えるかという視点は、地域振興においても重要であり、本事業がそうした方向を後押ししようとしていることには意味がある。
ただし、ここで一つ確認しておきたいことがある。文化財の活用が具体化すればするほど、その前提となる保管と管理の重要性が、これまで以上に明確になるという点である。

1.文化庁が進める「文化財活用推進事業」とは
本事業の特徴は、文化財の価値を単に「見せる」だけでなく、「体験として構成し、継続的に社会へ届ける」ことにある。募集要領には、文化財の成り立ちや、その文化や自然がなぜその場所で生まれたのか、人々がどのように守ってきたのかを理解しながら楽しめる体験の造成が示されている。これは、単発のイベントを実施するだけでなく、文化財の意味を解釈し、わかりやすく伝え、継続可能な仕組みとして整えていくことが求められているということである。
この方向性自体は、近年の文化財政策の流れとも整合している。文化財は、かつては保護と保存に重点が置かれがちであったが、現在では「保存しながら活用する」という考え方が広く共有されている。とくに国指定文化財等は、地域のシンボルとしての役割や、交流人口の創出、地域への理解促進といった点でも注目されており、活用を通じて文化財に対する社会的支持を広げていくことは、今後ますます重要になると考えられる。文化財の価値を理解し、支える人を増やすことは、結果として保存の基盤を強めることにもつながる。
一方で、このような施策が進むとき、対象となる文化財が常に「活用できる状態」にあるとは限らない。むしろ、活用が具体化することで、ふだんは見えにくかった管理上の課題が表面化することも少なくない。活用を進めることと、活用に耐えうる基盤を整えることは、本来、同時に考えられるべき課題なのである。
2.活用が進むことで見えてくる、保管の重要性
文化財を活用するとは、言い換えれば、必要なときに必要な資料を、必要な条件で取り出し、説明し、提供できる状態にしておくことである。展示であれ、貸出しであれ、教育普及であれ、体験型事業であれ、その前提にあるのは、所在が把握され、基本情報が整理され、状態が確認できることである。
たとえば、活用の現場では、「この資料はどこにあるのか」「現物確認は可能か」「写真はあるか」「寸法や材質は把握できているか」「貸出しや展示に耐えうる保存状態か」といった問いに、短期間で答える必要が生じる。ところが、所在情報が曖昧であったり、台帳と現物の照合が十分でなかったり、写真記録が整っていなかったりすると、活用の企画そのものが止まってしまう。文化財を“使う”ためには、まず文化財を“把握できている”必要がある。
この点は、埋蔵文化財や未指定文化財において、より切実である。文化庁の資料でも、埋蔵文化財をめぐる制度や運用上の課題が継続的に整理されており、全国的に広大な対象を抱えるなかで、現状保存、記録保存、整理・保管、制度運用の見直しが論点となっている。文化審議会の第一次報告書では、全国に47万か所以上の周知の埋蔵文化財包蔵地があること、すべてを現状保存することは現実的ではないこと、そのうえで適切な保護の方策を改めて検討する必要があることが示されている。こうした議論は、発掘調査後に増え続ける資料の整理・保管・継承のあり方とも無関係ではない。
つまり、活用が進むほど、保管の問題は裏方の話ではなくなる。保管は、活用の前段階にある補助業務ではなく、活用そのものを成立させる土台である。ここを後回しにすると、活用の機会が増えるほど、現場はむしろ応答しにくくなる。活用推進の議論は、保管基盤の議論と切り離しては成り立たない。
3.現場の担当者が直面している現実
自治体の文化財担当者の多くは、文化財を地域に開きたいと考えている。地域の子どもたちに知ってもらいたい、市民にもっと身近に感じてもらいたい、来訪者に地域の歴史を伝えたい。その思い自体は決して弱くない。
しかしその一方で、現場には、それと同じくらい現実的で重い日常業務がある。文化財の所在確認、台帳整備、写真管理、保存環境の確認、問い合わせ対応、資料の出し入れ、発掘調査後の整理、収納場所の確保、担当者交代時の引継ぎ。こうした業務は、一つひとつは地味であっても、止めることのできない基盤業務である。しかも、行政組織では担当者の異動が避けられず、数年ごとに知識や経緯の引継ぎが必要となる。台帳が存在していても、分類の意図や収納経緯、過去の整理方針まで十分に伝わっていなければ、次の担当者は結局、所在確認や再整理から始めざるを得ないこともある。
このとき、活用が進まない理由を、担当者個人の意欲の問題に還元するのは適切ではない。活用したいが手が回らない、企画に応じたいが資料をすぐに出せない、貸し出したいが状態や記録の確認に時間がかかる。こうした状況は、個人の姿勢ではなく、構造的な課題として理解されるべきである。
とくに埋蔵文化財の分野では、発掘調査に伴って毎年新たな資料が加わる。調査が継続する限り、保管対象は増え続ける。一方で、保管スペース、人員、整理時間は無限ではない。結果として、活用以前に、資料を適切に管理し続けるための基盤整備そのものが追いつかないという状況が生まれる。現場が抱える負担は、決して例外的なものではなく、多くの自治体に共通する現実である。だからこそ、活用の議論と並行して、所在確認、台帳整備、写真記録、引継ぎ可能な管理体制をどのように整えていくかは、各自治体の担当者にとって実務上の重要課題となっている。
4.活用推進と保管整備を両輪で進めるために
ここで必要なのは、「活用か、保管か」という二者択一ではない。むしろ、活用を進めるなら、その分だけ保管整備も前に進めるという発想である。両者は競合するものではなく、相互に支え合う関係にある。
国指定等文化財を対象とした活用推進事業が充実することは重要である。しかし、それだけでは文化財全体の基盤強化にはつながりにくい。未指定文化財や埋蔵文化財、あるいは地域の収蔵施設に眠る資料群について、所在管理や台帳整備、写真記録、取り出しやすい収納方法、引継ぎ可能なデータ整備が進まなければ、活用可能な文化財の裾野は広がらない。
文化財を「活用できる状態」に近づけること自体が、すでに重要な文化財施策の一つである。派手なイベントや体験プログラムだけが活用ではない。必要な資料を適切に把握し、保存し、必要な時に社会へ開けるようにしておくこともまた、活用を支える実務である。今後は、活用推進施策と並行して、こうした基盤整備をどのように位置付け、支えていくかが問われる。
その意味で、文化財活用推進事業の公募は、単に「見せる文化財」を増やすための制度ではなく、「社会に開くことのできる文化財の基盤」をどこまで整えられるかという議論を促す契機にもなり得る。活用の拡大は、そのまま管理体制の再点検を促す。その両方を視野に入れた議論が、今後ますます必要になる。
5.活用を支える連携体制をどう築くか
こうした基盤整備を考えるとき、論点になるのは自治体内部の体制整備だけではない。限られた人員と予算のなかで、どの業務を内部で担い、どの部分で外部の専門的知見を生かすかという、役割分担の設計も重要になる。
ここでいう外部連携とは、自治体の役割を弱めることではない。むしろ、行政が本来担うべき判断、方針決定、地域との調整、文化財行政としての責任を維持したうえで、整理、保管、台帳整備、写真管理、データ整備といった実務を、どのように継続可能な形で支えるかという問題である。文化財行政の中心はあくまで行政にある。その前提を崩さずに、現場の負担を分散し、継続性を高める方法を考えることは、きわめて現実的な課題である。
実際、文化財の整理や管理には、継続的な作業体制、記録の統一、現物と情報の照合、出し入れを見越した収納設計など、専門的かつ地道な知見が必要となる。こうした実務は、短期的な応援や一時的な人員配置だけでは安定しにくい。内部体制の充実とあわせて、外部の知見を適切に位置付けることは、今後の選択肢の一つとして十分に検討に値する。
特定非営利活動法人文化財保管活用支援機構(CPSUS)は、文化財の整理、保管、台帳整備、写真・所在情報の整理、活用に向けた管理基盤づくりといった、文化財を社会に開く前提となる実務に着目してきた。文化財を活用するためには、まずその前提となる管理基盤が整っている必要があるという考え方である。活用施策が広がる今こそ、現場で蓄積されてきた保管と整理の知見を、活用の議論と接続していく必要がある。
6.活用を持続させるために
文化財活用推進事業の公募は、文化財の価値を社会に伝えるための具体的な施策の一つである。文化財を地域の内側だけにとどめず、学びや体験を通じて社会に開いていくことは、今後ますます重要になるであろう。
その一方で、活用を持続的なものにするためには、保管と管理の基盤を整える視点が欠かせない。どこに何があり、どのような状態で、どのように取り出せるのか。そうした基盤が整ってはじめて、活用は安定した実務として成立する。活用推進が進むほど、保管整備の重要性はむしろ高まる。
文化財行政のこれからを考えるうえで必要なのは、活用を進めることそのものと、活用を支える基盤をどう整えるかを、同じ地平で議論することである。保存と活用の両立が制度上の理念であるならば、保管と活用もまた、実務上の両輪として扱われるべきである。
CPSUSは、文化財を社会に開くための基盤を、現場の実務から支える立場にある。文化財の活用を持続させるためには、役割を分担しながら、現場に合った形を整えていくことが重要である。その具体的なあり方について、引き続き考えていきたい。
文化財の整理・保管でお困りの方へ
参考資料
文化庁「令和8年度 全国各地の魅力的な文化財活用推進事業」
文化庁「埋蔵文化財保護行政の現状と課題」
文化庁「出土品の保管について(報告)」
文化庁「出土品の保管について(報告)<概要版>」
文化庁「出土品の取り扱いについて(報告)」
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